「派手にやったねぇ」
ふと前を見ると人影。
「山口」
「歳なんだから加減しなって」
苦笑しながら山口が城島から太一を取り上げ肩に持ち上げた。
「ぅわっ!?離せよっ!!触んなっ!!」
「茂君、暴れないように躾けといてよ」
暴れる太一をものともせずそのまま担ぎ続ける。
「なんだとぉ!!俺は犬じゃないっ!!」
「解ってるよ」
少し優しくなった声音に太一が暴れるのをやめた。
「お前は死んで良い奴でもねぇよ」
「・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・」
「追放前に助けてやれんくて悪かったな」
「・・・・・・・・・・・」
太一は顔を真っ赤にして俯いた。
「ほな、帰ろか」
その頭を軽くポンポンと叩き、城島が笑う。
「飛んでく?僕が飛ばそうか?」
「・・・アナタまた座標間違うでしょ」
「今度はいける気がするんやけど」
「・・・・・・・・また?」
山口の言葉に太一が眉を寄せた。
「この前も移動した時に座標間違えて、松岡の真上に出ちゃって。それが知り合ったきっかけなんだけどね」
「あはは、やっちゃったv」
ハートマークでもつけそうな口調で城島が言う。
「・・・・・アンタそれでよく七王に名前連ねられるね・・・・・・・・」
「指名間違えたんじゃねぇの?」
「・・・・・・酷いがな・・・・・・・」
山口と太一の暴言に、城島はこっそりと落ち込んだ。















「お帰りなさーい!!あー!!!太一君だー!!!」
「ぎゃー!!潰れるー!!!」
城島と山口を心配しながらお茶をすすっていた松岡は、玄関へ走っていった大型犬の喜声と叫びを聞いた。
「なーにやってんのよ、長瀬!!って、お帰り、リーダー、兄ぃ」
長瀬を怒るついでに玄関に出て行った松岡が、嬉しそうな顔で出迎える。
その中に見たことのある顔を確認して、彼は自信なさそうに、でも笑顔で出迎えた。
「えと、国分さん、でしたっけ」
「覚えてたの・・・?」
驚いて、太一がそれだけ言うと松岡は唇を少し尖らせる。
「長瀬じゃないんですから、覚えてますよ」
「長瀬?」
「アンタに引っ付いてたでっかいアホです」
その本人は山口に叱られていた。
「・・・・・アレは天然・・・?」
「みたいですよ。何度やっても懲りてないから。ってか何でこんなにボロボロなのよ」
「・・・え・・・あー・・・・」
太一が答えを迷っているうちに、松岡は太一の手を掴んで家の中に引っ張り込む。
「ちょっと来て!!消毒しないと傷口膿んじゃうでしょ!」
「あー、頼むわ松岡ー」
怒られる長瀬の様子を眺めながら、城島がほやほやと言う。
「アンタも自分の部下ぐらい自分で何とかしなよ!!」
怒りながらも太一の手は離さない。
「・・・・・・いいから、放せよ」
「怪我の治療ぐらいさせてよ」
「ひ・・・必要ないっ」
「何でよ!!」
太一がその手を振り払うと、松岡が怒った。
「言ったでしょ!消毒しとかないと化膿しちゃ・・・・」
「自分で!!・・・・・自分で治せる・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・。そうなの?」
「・・・・・俺を何だと思ってんの?」
「・・・・・・・」
沈黙して顔を背ける松岡を、太一は内心アホだと思った。
「太一ー。ちゃんと消毒してもらわなあかんで。こっちでは治りにくいんやから」
「・・・・・・・」
「やったら命令。ちゃんと治療してもらうこと」
その言葉に太一が意地の悪い笑顔を浮かべた城島を睨みつける。
「そんだけ元気やったら大丈夫やと思うけどな」
城島は太一の頭を軽く叩いて、階段を上がっていった。
「・・・・・一応やっときましょうよ」
腑に落ちない表情を浮かべながらも、今度は黙って松岡に従った。



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2006/3/15



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