どれだけ待っても、衝撃や爆音、痛みさえ感じなかった。
「・・・・・・・・・・・・?」
恐る恐る目を開けると影があった。
「・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・」
「誰だてめぇ!!天使かっ」
突然現れた人物に、悪魔たちはチンピラのような声を上げた。
「太一、生きとる?」
それを無視して太一に声をかけてくる。
「・・・・・・・・・・・何とか生きてる」
「ごめんなぁ。遅うなってもうた」
「・・・・・・・・・ホント、鈍クサイよ・・・・・・・・・・・・・・」
困ったような笑顔を浮かべる城島を見て、安心したと同時に目が潤む。
「・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・・」
堪えきれずそれは溢れだした。
「太一・・・・・・・・・・」
「お・・・・・・・・俺・・・・・・・・・死ぬって・・・・・・・・・・・・思った・・・・・・・・・・・・」
作戦の為に命を投げうてと、死を強制されたあの時が甦る。
「・・・・・・・・・・・・怖かった・・・・・・・・・・・・」
小さくしゃくりあげる太一の頭を城島はそっと撫でた。
そして、
「うちの太一泣かしたんはお前らか」
「だれなんだ貴様!!」
急に変わった口調に悪魔たちは恐怖を感じながらも虚勢を張る。
「ほぉ・・・・・・・僕を知らんと喧嘩売ったん?ええ度胸しとるなー。・・・・・・・お前ら、坂本んとこのガキやろ」
「なっ・・・・・・・・・・・・・」
「あいつも物好きやなぁ。こんなアホども囲って・・・・・・・・・。僕に喧嘩売ったこと、後悔させたるわ」
瞬間、周囲の温度が僅かに下がった。
「ねぇ、兄ぃ。さっきの何なのさ。一応1人分増やして作ってるけど」
おたま片手に松岡が台所からリビングに顔を出した山口に問いかける。
「そのまんまの意味だよ。茂君が誰か連れてくる」
「誰かって、この前の人?」
その言葉にテレビに釘付けだった長瀬が山口を見た。
「さぁね」
肩をすくめて言葉を濁すだけで、何のヒントも得られない。
長瀬と松岡は顔を見合わせて首を傾げた。
諦めて松岡が料理に、長瀬がテレビに目線を戻した時、ぽつり、呟いた。
「・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・いいよ」
「何がですか?」
長瀬がソファでくつろぐ山口を振り返った。
「何でもねぇよ」
苦笑のような笑顔を浮かべて手を振る。
その時長瀬の表情が曇った。
「・・・・・・・・・あ、れ?・・・・・・・・・・なんすか・・・?コレ・・・」
突然襲ってきた重圧感に耐えられず、その場にうずくまる。
「・・・ぁ・・・・・・重・・・」
「ちょっと!?長瀬、どった・・・・・・・・の・・・・・・・・・」
慌てて台所から出てきた松岡も膝をついた。
息が詰まって胸が苦しい。
それを見て山口が羽根を広げる。
「あれ?」
「どうだ?」
のしかかるような重さが一気になくなった。
「治った・・・・・・・・・けど今の何よ、兄ぃ・・・」
「茂君。・・・・・・・・・・あの人も年のクセに頑張っちゃって・・・・・・・・・・」
頭の上にはてなマークを浮かべる2人を見てため息をついた。
「え?え?」
「リーダーなんすか?コレ!?」
「腐っても悪魔って事だよ」
混乱する松岡と長瀬に、再びため息をついた。
「・・・・・・・・・・・・・リー・・・・・・・・・・・・・・・」
城島の背中に黒い羽根が一対現れる。
「・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・悪魔・・・・・・・・・・・・・・・・?」
立ちすくむ悪魔達の中の誰かが言った。
「『裏切り者には制裁を』。古い掟やね。なら僕が『卷属を貶めた者には報復を』という掟に従っても問題ない訳や」
低い笑い声。
その場の者達は戦慄した。
「我はラース。憤怒を司る煉獄の王なり」
高らかにその声が響く。
さらに二対の黒翼が姿を見せた。
「あ・・・・・・・・・・・・・・・あれが・・・・・・・・・・・・・・・城島・・・・・・・・・・・・・」
「太一を貶めた罪は重いで。死を以て償えや」
その瞬間、目の前の悪魔達が炎を上げて燃え始めた。
「うわぁ!!?何だこれ!!?」
「消えねぇよ!!」
慌てて水系の呪文を使うがまったく効果がない。
「・・・・・・・・・見苦しいなぁ・・・」
城島がぼそりと呟いた途端、さらに激しく燃え始めた。
轟々音を立てる炎は断末魔の悲鳴も飲み込んで全てを燃やし尽くす。
その場には何も残らず、地面を覆うアスファルトが沸騰して泡を立てていた。
「あ。消えた」
長瀬がポツリと呟いた。
「俺ちょっと出てくるわ」
2人を残して山口が出て行った。
「太一、立てる?」
さっきまでの様子は露ほどもなく、やんわりとした笑みを浮かべて城島が手を差し伸べる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・アンタ、年なんだからあんなに張り切らなくてもいいのに」
顔を背けながら太一は腕を取った。
「うーん、つい張り切ってもうたわ、太一のために」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
にこにこと笑う城島を太一は真っ赤な顔をして軽く殴った。
「痛いがな〜、酷いわ〜」
それでも笑いながら太一の肩を抱える。
ふと城島を見る。
何が嬉しいのか、笑顔を浮かべていた。
あぁ
やっぱ此処は居心地が良いなぁ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ただいま」
ぽそりと呟いた太一の言葉を受けて、
「おかえり」
城島は小さく笑った。
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言い訳
城島さんが『我はラース。憤怒を司る煉獄の王なり』って名乗ってますが、
コレはいわゆる二つ名みたいなもので、本名じゃないです。
『煉獄の王ラース』が役職名で、同族を公式に攻撃する時は名乗らなきゃいけない規則になってます。
これは公式の行動ですよっていう宣言だと思ってください。
ちなみに燃やされた方々は名乗ってないです。
2006/02/26
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