関節技を決めているのが小柄な青年。
叫んでいるのが黒髪を立たせた背の高いだろう青年。
その2人を見て、扉を開けた城島が凍り付いた。
「・・・・・た・・・・・太一・・・・・?」
城島の隙間から覗いていた山口と松岡が様子がおかしいことに気付いた。
「茂君?」
「どうした・・・・・」
「・・・・・リーダー・・・・・」
技を決めていた青年が城島を見て目を見開いた。
背の高い青年が解放される。
「・・・・・太一・・・・・」
「リーダー・・・・・っ!!」
小柄な青年が笑顔で両手を広げて小走りに近付いてきて。
城島は勢いよく戸を閉めた。
ゴンっ
鈍い音が響く。
戸の内側の3人の間に沈黙が瞬間的に降りた。
「・・・・・今スゴイ音しなかった・・・・・?」
松岡が口を開く。
「・・・・・山口さん・・・・・」
城島が重々しく山口を呼んだ。
「・・・・・何ですか・・・・・?」
つられて山口も重々しく答える。
『・・・・・ちょっと、リーダー?何で閉めるの?・・・・・痛かったんだけど・・・・・?』
外から青年の抗議の声が伝わる。
『・・・・・開けろよ』
「・・・・・っ!!あとは頼むでっ!!ボクは逃げる!!」
青い顔でそう言い残し、2階へと駆け上がっていく。
不意に、松岡は目眩のような感覚を覚えた。
『・・・・・開けてくんないの?そっちがそのつもりなら覚悟してね』
その言葉に、山口が突然声をあげた。
「伏せろ松岡っ!!」
反応できずにいる松岡を突き飛ばして無理矢理伏せさせた瞬間。
ドォンっ
盛大な音を立てて玄関が吹っ飛んだ。
「!?」
驚いてものも言えない2人をよそに青年が笑顔で瓦礫をかき分けながら入ってくる。
「お邪魔しまーす。ねぇ、リーダーどこ行った?」
松岡が圧倒されて階上を指さした。
「ありがとー。
りぃぃだぁぁあ!!!!」
そして、青年はものすごい笑顔で階上へ駆け上がり、しばらくして爆音と断末魔の悲鳴が聞こえてきた。
ちなみに。
技を決められていた青年はずっとぐったりしていた。
「・・・・・ボクの部下の太一です」
「どーもー。国分太一ですー」
一部黒こげになった城島が隣に座る笑顔の青年を紹介した。
外からの風が爽やかに吹き抜ける。
「で、こっちが天使の達也」
「天使の山口です」
「あっちがお世話になってる人間の松岡」
「松岡昌宏です。人間です」
「で、ボクは城島茂です〜」
悪魔ですわ〜と長瀬に笑いかけた。
「俺は天使の長瀬智也でっす!!ぐっさんの部下でした!!」
俺も俺も、というような雰囲気で、背の高い青年が手を挙げ立ち上がって名乗った。
「あー、うん。そーだな」
ともかく座れ、と山口が言うと大人しく従った。
「あのさ、1つ訊きたいんですけど」
怖ず怖ずと松岡が口を開いた。
「何で玄関先でプロレス?」
「そう!!国分さんひどいんですよ!!俺がチャイム押したら技かけてきたんです!!」
半泣きで長瀬が訴える。
当の本人は知らん顔。
「太一〜」
「だってこのバカ天使が俺より先にチャイム押して、勝ち誇った顔で俺を見たから」
「違いますよ!!あれは見つかって良かったですねって」
「勝ったって顔してたっ!!」
「してませんって!!」
ぎゃいぎゃいとしたしないで騒ぎだす。
「・・・・・止めなくていいの?」
「止まりそうにないな」
「止めなあかん?」
「止めるべきでしょ」
城島と山口の返答に松岡が呆れた様子でツっこむ。
「めんどくせぇな」
「壊れても大丈夫やで」
山口がボソリと呟くと、城島が意味のつながらない言葉を返した。
「・・・・・。了解」
山口はパチンと両手を合わせ、小さく何かを呟いてから右手でプロレスに発展した2人を指さす。
「落ちろ」
言った瞬間、2人に電撃が落ちた。
「「ぎゃあ!!」」
悲鳴を上げて2人は静かになり、カーペットが焦げた。
「で、何でここに来たん?太一も長瀬君も」
「「連れ戻しに」」
2人の言葉はきれいにハモった。
「じゃあ長瀬君から詳細聞こか。みんなに解るように頼むな」
その内容に動じることなく城島が話を続けさせる。
「えっとですね、俺の上司はぐっさんなんですけど、ぐっさんと同じくらいの人が7人いて」
「同じ役職な」
「その中の1人が中居君っていうんですけど、
その人が『俺の仕事が増えてんじゃねーか!!ふざけんなっ!!連れ戻してこい!!』って」
「そーなんかぁ。解りやすいねぇ」
にこにこと城島が言うと長瀬は満足そうに笑う。
平仮名が多そうなしゃべり方だなぁと松岡は思ったが黙っておいた。
「中居ね〜・・・・・」
山口が興味なさそうに呟く。
「アイツはいつも暇そうだったから忙しくなっていいんじゃないの」
「そうなんすか?」
「覚えてねぇかな。アイツいつも暇だ、暇だ言ってただろ?」
「そうかも・・・・・。じゃあそう伝えます。
あ、そしたら俺の仕事は終わりましたー」
山口の言葉に長瀬は連れ戻すことをあっさり諦めた。
「ちょっと待ってよ。・・・・・な・・・・・長瀬・・・・・さん?」
思わず松岡が口を挟んだ。
「長瀬でいーよ。さんづけキライなんだー」
「じゃあ長瀬。あんた兄ぃ・・・・・山口君を連れて帰るのはいいのかよ」
「だってムリですよ。この人連れて帰るの。
ぐっさんも絶対帰らないつもりっしょ?」
長瀬がぐりんと横を向く。
「当然だね」
ふんぞりかえるように座る山口が答えた。
「だから俺上に帰りますね!!」
いきなりそう言って長瀬は消えた。
「「「・・・・・」」」
「・・・・・忙しいやっちゃね」
呆気にとられる面々の中で城島が呟く。
皆無言で同意した。
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2006/02/26
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