これはシゲ誕記念小説【レッドラム】の没部分です。
キリが悪いので、シゲさんが入院し、ぶん氏と紫氏がそれを知ってショックを受けた後、
ベイベが事故と彼が植物状態に陥った理由を告白するシーンから始めてます。
実際にUPした作品とは話のニュアンスが違います。
ちょっとした三角関係(もどき)が苦手な方はやめておいたほうがいいかも、知れない、です。
でもあんまり期待はしないでくださいね。
× × × × × × ×
「俺ね、ぐっさん」
茂の状態を伝えると、少し間を置いて、長瀬は突然そう言った。
「リーダーには幸せになってもらいたかったんです」
長瀬は俺の顔は見なかった。
まっすぐ前、白い壁をじっと見つめて、言葉を続ける。
「ほら、俺、姉さん以外家族居なかったでしょ?それが、姉さんとリーダーが結婚してさ、
家族が増えたじゃないですか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺、すっごく嬉しかったんです」
懐かしそうに、長瀬は目を細める。
「姉さん、リーダーと結婚してから、ホントに幸せそうだった。
だってリーダー、姉さんのこと、本当に愛してくれてたもん。
血も繋がってないのに、俺のことも、本当に大切にしてくれて。本当の家族みたいに・・・・・・・・・」
声が震えた。
「だから、姉さんが死んだ時、すごく悲しかった。
唯一の家族だった姉さんがいなくなったのもそうだけど、・・・・・・・・・・リーダーが、姉さんの後を追おうとしてたから。
どんな言葉を伝えても、茂君はこっちを見てくれないから・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・あの事故は、本当に偶然だったけど、俺、茂君に死んでほしくなかった。
俺達姉弟に幸せをくれたあの人が、悲しんだまま死んでいくなんて、嫌だったんです」
長瀬は両手で顔を覆って、それを言った。
「だから俺はあの人の代わりに死んだはずだったんです」
「あの事故で死ぬはずだったのはリーダーだった。でも、俺はリーダーを死なせたくなかった。
・・・・・・・・・・・・・・だから、代わりに俺がいくから、リーダーを助けてって、お願いしたんです・・・・・・・・」
────── 僕の代わりにアイツがいってもうた
昏睡状態から目覚めた時の茂の言葉。
何を馬鹿なことを言ってるのか。
そう言って取り合わなかったけれど、それは、本当だったのか。
「でも、リーダーは俺を迎えに来た。リーダーじゃ出来ないから、太一君まで呼んで・・・・・・・。
そうやって来れないはずの人を無理につれてきたから、俺の約束が切れてしまったんです。
・・・・・・・・・だから・・・・・・・・・・リーダーは・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
鼻をすする音が響く。
例えば、長瀬が言っていることが本当だったとして。
判ったことは唯一つだけ。
茂は戻ってこない。
それでも諦めきれないのは長瀬という前例があるからに違いない。
機械音と人工的な呼吸の音だけが響く病室で、その姿を見ていると泣きそうになった。
「・・・・・・・・・・・誕生日前に何やってんだよ」
届かないと解っていたけれど、言わずにはいられなかった。
──── 兄ぃ
記憶の片隅に引っかかってる松岡とのやりとりが浮き上がってくる。
──── 兄ぃ、リーダー泣いてない
泣いてる余裕ないんじゃねぇの
──── 笑ってもないんだよ
笑う状況じゃねぇだろ
──── ・・・・・・・・・違うよ、兄ぃ
何が違うんだ
──── きっと誰のせいでもないんだよ
長瀬の姉の葬式の日。
その日の茂の様子を全く思い出せない。
だって見てなかった。
見れなかった。
下手したら殴ったかもしれなかったから。
どうして
何で
答えの出ない問いばっかりぶつけて、あの人の立場でモノを考えることなんて出来なかった。
『俺だったら死なせなかった』なんて、嘘だ。
今現在、あの人を死なせたじゃないか。
そんなんで、彼女を救えたはずがない。
あの時フォローしていれば、あの人は死にたいなんて思わなかったかもしれないのに。
俺があの人を殺したも同然だ。
『太一君と話したんだけどね。17日、リーダーの誕生日じゃない?長瀬も退院するし。
だからこないだみたいにお祝いしようって』
「・・・・・・・・・・・・・松岡」
『え?何?マズいかな』
「ごめんな」
『え!?どうしたの!?』
今ならお前が言った意味が解るよ。
誰も悪くなかった。
一番駄目だったのは俺だったんだ。
『兄ぃ?どうしたの?何かあった?』
電話の向こう。松岡の声が遠い。
たまらなく涙が出てきて、しばらく泣いた。
× × × × × × ×
この先、兄ぃの夢のシーンですが、2通りに分岐します。
その1:UPしたものとはまったく違うもの
その2:UPしたものと少し違うもの
どちらも途中で止まってます。
お好きな方へどうぞ。
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2006/11/17
とじる