「ねぇ。私はそろそろ消えようと思うよ」
「はぁ?」
突然の言葉に、本を読んでいた彼は頭を上げた。
「どういうことだよ」
「死ぬってことだよ」
「何言ってんだ。お前は不老不死なんだろ」
「違うよ。いつ死ぬかを決めさせてもらってるから死ななくて、老いを止めてるから老けないんだよ」
「一緒じゃねぇか」
「でもいつかは死ななきゃいけないんだ」
「へぇ。で、何でまた今なわけ?」
「いやぁ、私ばっかりが君を独占していたらいけないだろう?」
「何だそりゃ」
彼が怪訝な表情を浮かべると、彼女は楽しそうに笑みを浮かべる。
「なんてね。知ってるよ、君にもうすぐ寿命が来るって事ぐらい」
ふふ、と彼女は笑い、彼の目を見た。
「君がこの世にいないなら、私は楽しくないからね。もう十分生きたことだし」
「アイツ等どうすんの」
「君はどうするんだい?」
「俺?俺は契約を解除するよ。一緒に死ねなんて言えないからさ。後は好きに生きてくれればいい」
彼は肩を竦めてそう言った。
「・・・・・・・残酷だけどな」
「そうだね。・・・・・・・でも私も同感だ」
そして彼女は立ち上がる。
「君は確か来週の今日だったね。私は先に行くとするよ」
「今日かよ」
「善は急げってね」
「せっかち。・・・・・・・またな」
「あぁ。また」
彼女の言葉に、彼は笑って見送った。
彼女もまた、笑って部屋を後にした。





最強と謳われた魔女と魔法使いがこの世からいなくなったのは、それからすぐのことだった。














「見つけたよ」
「・・・・・・・今度はデマじゃなかったか」
「しかも2人一緒にいる」
「また?」
「うん。でも血の匂いが少し違う。微妙に兄弟?」
「何だよ、それ」
首を傾げた長身の影の言葉に、小柄な影が眉を寄せた。
「とりあえず様子を見てみるか」
「だね」
そして2つの影は消えた。









magnetic frontier








それは春の始まりの頃の事。












とじる