白い部屋




白いキャンバスが黒鉛で汚れてく。
薄かったり濃かったり、太かったり細かったり、様々な線が描かれて、平面が3次元の姿を持つ。
「キャプテン」
名前を呼んでみても何の反応もない。
「キャプテン」
キャンバスと顔の間に手を入れて、ようやく気付いてもらえた。
「ニノ?」
「やっと気付いた」
驚いた様子で僕を振り返る。
僕の文句に、彼はへらと笑った。
「ほら、ご飯冷めちゃうから行くよ」
「今日の飯何?」
「翔君ががんばって味噌汁作りました」
「えー、味噌汁だけ?」
「相葉ちゃんが突然天丼の出前頼んだんですよ」
文句を言う彼に僕は説明する。確かに味噌汁だけ、しかも得意料理が麦茶な翔君が作ったんじゃ、さすがの僕も嫌だけど。
それでも動こうとしない彼の腕をとって、僕は引っ張った。
「早く行きますよ」
「うん」
キャプテンは素直に僕に従った。
その手を握ったまま、僕らは部屋を出る。
「・・・・・・・・・ねぇ、ニノ」
小さく、僕は名前を呼ばれる。
「・・・・・・・・・」
「何ですか?」
何も言わない彼に、僕は足を止めて振り返った。
「良いですよ。呆れたりしないから言って」
「・・・・・・・・・・・・・邪魔じゃない?」
「邪魔じゃないです」
キャプテンの言葉に僕はそう即答する。
そして僕の顔がキャプテンから見えないようにまた向きを変えて、彼の手を引いた。
「ここにいてください。じゃないと困る」
だって泣きそうな顔は見せたくないんだ。



白い部屋、白い壁、白い机に白い服。
白は似合わないのに、あいつらは白い檻の中にこの人を閉じ込めた。
閉じ込めて、全部壊して、この人を人形にしてしまった。

連れ出した頃には、もう笑わなくなって感情の起伏もほとんどなくなっていた。
激しい拷問と自白剤の過剰な投与で人格も崩壊寸前。
今みたいになるまでに何年もかかった。
笑うようになった今でも不安定で、突発的に自殺しようとまでする。



「大丈夫。何もしないからって追い出したりしませんから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「俺らは・・・・・・・・・・・俺はアナタがいてくれないと困る」
手をぎゅっと握ると、握り返してくれた。
「さ、早くしないと冷めちゃうよ」
そして、何事もなかったように歩き出す。
「腹減ったー」
「なら早く降りてきてくださいよ」
彼の言葉に僕は文句を言いながら、階段を降りた。






*
裏設定がいろいろあって、ホントは暗い話だったんですが、やめときました。
初気象で初大宮。
ネズミ帝国へ行くバスの中で思いつきました。
まだ口調がつかめない・・・・・・・・・・・。

この話は走って跳んでる管理人さまに捧げます(笑) 大宮っていいですよね!

2007/3/11



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