俺は兄が大っ嫌いだった。
そして、多分誰よりも兄の事が好きだった。愛してた。
それだけは胸を張って言える。こんな矛盾する感情を抱くようになったのはいつからだろう。
そう考えてみて初めて、最初に出会った時からずっと気になってたのだと気付いた。
けれど俺は初め、兄を疎ましく思っていたのだ。


俺達兄弟は複雑な家庭環境の中にいた。
あの豪邸には俺や兄を含むたくさんの兄弟がいて、巨万の富を持つ父親に何一つ不自由なく育てられた。
しかし誰一人として同じ生まれの者はいなかった。そして父親には何人も愛人がいた。
つまり、あそこにいた子供は全て愛人の子で、俺も兄もその中の一人だった。


人でなしな父親は、愛人に子供が生まれれば、愛人には目もくれず、子供だけを必ず引き取った。
年を追う毎に兄弟は次第に増えていき、そしてある日、全ての兄弟を集めた前で父親はこう宣言した。
この中の一人にだけ全てを与えよう、と。
どの兄弟もその言葉を待っていた。皆、それが目的だったからだ。


母親の期待を受け、父親に気に入られようと誰もが必死に立ち回った。
俺も同じだった。
兄弟なんて名前だけ。奴等は全員蹴落とすべき邪魔者だったのだ。
そんな俺達を父親は冷ややかに笑いながら見ていた。
今思えばそれは父親の娯楽だったんだろう。俺達も母親も、暇を潰す為の道化に過ぎなかったのだ。


その中でたった一人だけ、空気の違う奴がいた。
父親に媚びる事もないどころか、関わる事さえしない。それでいて頂上に最も近い奴。
それが兄だった。
初めてその姿を見たのは父親が子供達を呼び集めた日だった。
皆、着飾っていた中、一人だけGパンにTシャツ、そしてサンダルという出で立ちで現れた。


ボサボサの長い髪と分厚い眼鏡で顔なんてほとんど分からない。
気配も感じさせず、いつ来たのかさえ誰も知らなかった。
そんな奴が何で頂上に近いと思われたのか。
それは彼に気付いた時の父親の態度だった。見た事のない表情をしたのだ。
あれが普通の父親が我が子に向ける、普通の表情に違いなかった。


その日から兄は誰からも妬まれた。
憎まれて、ひたすら嫌がらせを受けた。しかし兄は変わらなかった。
自分から仕掛ける事も報復をする事もなく、けれど身を縮める事もない。
誰よりも自分らしく生きていた。きっと俺達の事なんて眼中にないに違いない。
そう気付いた時から、腹立たしくて仕方なかった。


何度挑発しても無視される事に腹が立ち、一度だけ、兄の部屋に忍び込んだ事がある。
大事にしていそうな物を見付けて、それを壊してやろうと思ったのだ。
初めて入った兄の部屋は、荷物も味気もない寂しい部屋だった。
しかし隈無く眺める内に、モノトーンの部屋の中で、一つだけ目についた物があった。


それは小さな木箱だった。掌に乗る程で、丁寧な細工が施されていた。
凝ったデザインではなかったが、素人目にも高価な物だとすぐに分かった。
俺はそれを手に取り、開いてみた。すると小さな音が流れ出す。それは古いオルゴールだった。
微かに鳴る音色が何なのかは不明だったが、懐かしい感じがした。


その時、ある疑問が不意に頭を過った。
本当にこれを壊して良いのだろうか。
例えば、もしも自分が大切にしてる物を壊されたら?
俺だったらきっと、泣いて、犯人を探し出して、殺してやりたいと思うだろう。
こんな事をしても、相手を蹴落とす事にはならないんじゃないか。
今更に、そんな事に気付いた。


俺は箱を閉じると、そのまま元の位置に戻した。
もっと別の形で挑めば良い。
そう思って振り返り、驚いて固まった。
入り口の壁に凭れた兄が、腕を組んでこちらを見ていた。
後ろめたさから鼓動が早くなる。
真っ白になった頭ではまともに考えられなかったが、これだけは言わなければと思い、口を開いた。


「勝手に入って、勝手に触ってごめんなさい」
緊張しすぎたからか、声は震えていた。
何の反応も無くて、怖くて俯いた。
微かな足音がして、視界が僅かに翳る。
顔を上げると、目の前に兄はいた。
「壊したら殺したろ思っとったんやけどな」
そう兄は笑った。
おもろい奴、と呟きながら兄は横を通り過ぎた。


兄はそれ以上は何も言わなかった。
部屋の中を確認するでもなく、俺を追い出すでもなく、
机の上にあったよく分からない雑誌を手にベッドに横になり、それを読み始める。
どうして良いのか分からず、とりあえず部屋を出ようと思った。
「今度はノックしてや、太一」
扉を開けたと同時に、兄はそう笑った。


返事もせず、逃げるように廊下を走る。
勢いよく自分の部屋に入り、鍵を締め、ベッドにダイブした。
緊張からか走ったからか、早鐘のような心臓に合わせ大きく肩で息をする。
悪事がバレた気不味さと、また別の何かがあって、心苦しい気がした。
兄は俺の名前を知っていた。それが心苦しさの原因だった。


俺は兄の事を嫌な奴としか見ていなかったのに、
兄は、嫌がらせしかしない形だけの家族をちゃんと名前で呼んだ。
それが悔しくて堪らなかった。既に負けている気がした。
このレースが始まった時から父親のお気に入りだったという前に、
兄と同じスタートラインに立てていなかった事に気付かされたのだ。


悔しくて、とりあえず兄を知る事から始めようと思った。
でも誰に聞いても俺が知ってる情報しか出てこない。
開始して早々に聞き込みに飽きてしまい、気付けば兄の部屋の前にいた。
やけくそでドアを叩く。
少し間を置いてから、緩慢に扉は開いた。
ゆっくりと顔を覗かせた兄は、何故か変な顔をしていた。


「何やの」
少し苛立った声に内心ビビりながら、ノックはしたと開き直る。
話がしたいから中に入れてほしいと頼むと、首を傾げながらも入れてくれた。
椅子を用意され、そこに座る。兄はベッドに腰掛け、何用かと俺を見た。
意気込んで開いた俺の口から出てきたのは、今思えば何とも情けない言葉だった。


「好きな食べ物何?」
「は?」
兄はあんぐりと口を開けて眉間にシワを寄せた。
意味が解らない、馬鹿かこいつはと如実に物語る表情を見て、一気に顔が熱くなる。
「・・・・・わ、悪口言う前に、アンタの事知っておきたいと思ったんだよ!こういう質問して何が悪い!」
恥ずかしさを吹っ飛ばすように噛みついた。


「知らない相手の事を悪く言うのは失礼だ」
「知ってたらえぇんかい」
「相手を知ってから自分が嫌なところ言うんだから、嘘は言ってないもん!」
「屁理屈」
「屁理屈だよ!悪いか!」
売り言葉に買い言葉。
本心とは異なる理由付けになってしまったが、勢いで言い切ってしまった。
すると兄は黙り込んだ。


暫しの沈黙の後、兄は小さく笑い、口を開いた。
「唐揚げが好きや」
「はぁ!?」
「でも量は食べれん」
1個か2個で良いと兄は言った。
俺はてっきり文句を言われるもんだと思ってたもんだから、言い返すつもりの音量で声を上げてしまった。
「焼きそばも美味いな。あとレトルトやないカレーも好きやな」


「・・・・・安いものばっかじゃん」
嬉しそうに挙げ連ねた兄にそう言い返すと、文句を言いたそうな顔をした。
「何言うてん。安くて美味いんが一番なんやで」
そして安くて美味しいものについて語り出す。
その生き生きとした様子に呆気にとられ、俺は思わず呟いてしまった。
「・・・・・俺、安いもの食べた事ないもん」


その言葉に一瞬黙り、次に兄は笑い出した。
「さすが金持ち坊っちゃんは言う事がちゃうな。今度お前もビックリな安くて美味い店に連れてったるわ」
笑いながらの言葉に腹が立って、今度は俺が頬を膨らませた。
馬鹿にされてると思えたからだ。
「金持ち坊っちゃんって、アンタも親父から金貰ってるだろ」


父親は子供を玩具としか見ていなかったが、全ての子にそれ相応の金を渡していた。
もちろん俺も貰っていた。けれどそれを言い切った瞬間、兄の目の色が変わった。
背筋に寒気を感じながら、兄の言葉を待つ。
「あんな金、一銭も使っとらんわ」
「え、何で・・・・・?」
「殺したい奴の施しなんて受けてたまるか」


怒ってるのか何なのか、よく分からない笑顔を兄は浮かべた。
そしてこれ以上この話題には触れてはいけないと、何となく思った。
「・・・・・じゃあお金はどうしてんのさ」
「バイトしとる。嫌やけど、食と住は与えられとるからな。最低限だけもらって後は自力や」
服もな、と兄は着ていたTシャツを引っ張った。


「ジーパンはヴィンテージで高かったけど、バイト代貯めて買った。これもや」
そう言いながら、兄はクローゼットの中からアコースティックギターを取り出す。
「弾くのが好き。あと本も好き。パソコンも好き」
ギター片手にベッドに腰を降ろし、爪弾き始めた。
単調な進行だったけど、優しい音色だった。


「お前は何が嫌い?」
旋律に耳を傾けていると、突然そう尋ねられた。
「飯行く時に困るから」
「・・・・・アンコは嫌い。カボチャも嫌。パクチーも好きじゃない」
そうか、と兄は頷く。
兄が、俺が答えられる質問したのは、これが最初で最後だった気がする。
「またおいで。話しようや」
帰る時、兄はそう笑った。


深い話ができた訳ではなかったけど、自分と大して変わらないのかもしれないと思った。
確かに兄弟の常識の中では、一番恵まれているのにそれを拒否する変な奴だ。
でも本当は兄弟の中で一番まともな人なのかもしれなかった。
話をしたからか、余計気になって、俺は積極的に接触するようになっていった。


条件は等しくという理由で、兄弟は全員同じ学校に通っていた。
もちろん学年は違ったが兄も同じだったから、会った時は極力話しかけた。
下校時に見掛ければ送迎を帰らせ、一緒に歩いて帰った事もある。
買い食いを教えてくれたのも兄だった。
初めて食べたたこ焼きがとても美味しかったのを覚えている。


兄と触れ合う内に、遺産の事など大して興味が無くなっていった。
母の手前、全てを投げ出す事は出来なかったが、どうでもいいやと思った瞬間に何となく軽くなった気がした。
今まで嫌で仕方なかったピアノが楽しくなった。
兄のギターと共演したら楽しいかもと思ったりもした。
この時が一番楽しかった。


ある日事件が起きた。
屋敷にいたメイドの一人が死んだのだ。
そして、何故かその葬儀は父親が取り仕切った。誰もが理解できなかった。
何故使用人の葬儀を父親が行うのか。
その時初めて知った。亡くなった彼女は使用人などではなく、父親の本妻だったのだ。
そして、兄の母親だった。
自殺だったらしい。


慌てて駆けつけた式場は小さく、こじんまりとした所だった。
参列者は殆んどおらず、兄が一人座っていた。兄は俺には気付いていないようだった。
兄の纏う雰囲気が少し怖かったが、声をかけると顔を上げた。
鋭い視線が一瞬突き刺さる。けれどすぐにその鋭さは消え、俺の知っている普段の兄に戻っていた。


「よう」
少し疲れた様子で、兄は手を上げた。
どう答えて良いのか分からなくて、うんと頷くだけになってしまった。
俺はそのまま兄の横に腰を下ろした。兄は何も言わなかった。俺も何も言えなかった。
式を取り仕切っていた父親は、見たことのない表情を浮かべていた。
それを兄は険しい顔で見詰めていた。


「お前は誰に就く?」
全てを終え、屋敷へと戻る道すがら、兄は突然にそう言った。
先を歩いていた俺は足を止め、兄を振り返る。
その時の兄の顔はけして忘れられない。冷たい目、嘲るような表情。
それが誰に対してのものなのかは判らなかったが、兄の中にあった負の部分の全てであるに違いなかった。


兄の問いに、俺は答えられなかった。どのように解釈すればいいのかも分からなかった。
「・・・・・分かんない」
俺は素直にそう言った。
気持ちを偽っても、雰囲気に流されても、兄はきっと俺に対して同じ感想を持つような気がしたから。
「そうか」
「でも」
俺が続けた言葉に、兄の瞳に僅かな驚きが映り込んだ。


それ以上兄の顔を見ていられなくて、俺は俯いた。
「・・・・・アンタの敵にはなりたくない、よ」
言葉の最後の方は掠れてしまっていた。けれどそれは本当の気持ちだった。
味方になれるかどうかは分からなかったけれど、敵対するのだけは嫌だった。
今まで通り、学校帰りに寄り道して、一緒に遊び回りたかった。


兄は何も言わなかった。俺が黙ってから少しして、ありがとうと小さく呟いた。
そして擦れ違いざまに俺の頭を撫でて、屋敷の方に歩いていく。
その声は少し弱々しくて、けれど俺が頭を上げたときにはもう、兄の顔は見えなかった。
あのとき兄はどんな顔をしていたのか。俺には少しも想像出来なかった。


その日から兄は変わってしまった。
何をしてるのかは分からなかったが、今まで以上に部屋に籠もるようになり、学校でさえあまり姿を見なくなった。
結局、あの頃のまま、楽しいままでいたいという俺の願いは叶わなかったのだ。
そして、あの日の兄とのやりとりが、子供の頃の兄との最後の会話だった。


俺が高校を出て大学に入る頃、父親は後継者を決めた。それはやはり兄だった。
噂でしか聞くことは出来なかったが、兄は傾きかけていた父親の会社を独りで立て直したらしい。
その業績を聞いて、騒がしかったどの兄弟も黙り込んだ。
誰もそれ以上のことは出来なかっただろうし、誰もやろうとはしなかった。


披露会の日、久しぶりに見た兄は、最後に話したときと同じ顔をしていた。
機械みたいな冷たい目。
ピアノとギターで共奏したり、寄り道してたこ焼きを食べたりしたときのような、優しい兄はそこにはいなかった。
そして、兄は手の届かない遠いところに行ってしまったのだと、このときに初めて気付いた。


権限移譲の書類にサインする父親と兄を見ながら、俺は気付いたら泣いていた。
そして思った。
もしもあの時ついて行くと言っていたら、兄の傍にいられたのかもしれない。
こんなところで兄を見上げるのではなく、もっと近くで笑うことが出来たのかもしれない。
もう戻れないんだ。それがとても悲しかった。


立会人が手続きの完了を宣言する。
取材に来ていたマスコミが一斉にフラッシュを輝かせ始めた。
明日の経済新聞の一面はこの報道に違いないだろう。
父親が誇らしげに兄への激励の言葉を告げる。
そして自分は、今後一切手を出さず全てを兄に一任するのだと、
生かすも殺すも兄次第だと、期待を寄せた。


一言を。マスコミの要請に兄が立ち上がる。
俺は聞きたくなくて、そっと踵を返した。
変わってしまった兄を見たくなかったし、
せめて記憶の中の兄だけは自分が好きだった頃の兄のままでいてほしかったから。
背後からありきたりな自己紹介が聞こえた。
訛が隠しきれていないその声はとても懐かしく思えた。


「全てを僕に一任する。その言葉はとても重く、しかしとても嬉しくあります」
その声音が本当に喜びに満ちていて、少しだけ気になって振り返る。
けれど目に入った兄の表情に、俺は何となく違和感を覚えた。
「僕は何がベストだろうか、どうすることが最良だろうか。何年も考えてきました」
そう兄は言う。


その言葉の全てに、主語がなかった。
他の人たちは分かっているんだろうか。沸き起こる不安に俺は周囲を見渡す。
誰もが『財団』の更なる発展を期待しているように見えた。
俺は兄から目を離せなくなった。
何を言うのだろう。
期待と不安を混ぜ込んで見ていると、不意に兄と目が合う。笑ったように見えた。


「そして一つの答えを出しました」
その言葉に全員が息を飲む。
そして、兄は言った。
「今日をもって財団は解体します。全ての株式はしかるべきところに売却し、
 それにより出来た資金は債務整理にあて、残りは全て寄付させていただく」
そのとき兄は笑っていた。そして愉快で仕方ないという表情で父親を見た。


会場の誰も理解できず、沈黙が下りる。
詳しくは別の者から。兄はそう言うと、愉快そうに壇上から下りた。
混乱から抜け出せずにいる賓客たちの間を颯爽と通り抜け、俺の前で立ち止まる。
俺はどうしていいのか分からず、兄をじっと見つめた。
兄は、ふっとその笑顔を緩めると、俺に向かって口を開いた。


「ただいま、太一」
俺は意味が分からなくて、口を開け、けれど言葉が出てこない。
俺のその様子を見て、兄は盛大に笑った。
そして俺の肩に腕を回し、会場から押し出して廊下に出る。
そこには見たことのない、ガタイの良い男がいた。兄は男と言葉を交わすと、その肩を叩く。
男は笑いながら離れて行った。


「何・・・・・何なの・・・・・」
意味が全く理解できなくて小さく呟いた俺に兄は笑った。
その笑顔は昔見たものと少しも変わっていなかった。それに少しだけ気が抜けてしまった。
「・・・・・さっきの、本気?」
「本気や」
俺の問いに兄はニヤリ笑う。
「これでもう僕とお前は敵対する必要はないやろ?またタコ焼き食べに行こうや」


兄はそう言うと、俺の肩を叩いて出口に向かって歩き始める。
そして着ていたジャケットを脱ぎネクタイも外し、背負うように肩にかけた。
どうしていいか分からずにそのまま立ち止まっていると兄が振り返る。
そして俺に向かって手を差し出した。
「おいで、太一」
その言葉に、俺は無意識に走り出していた。


その後、兄は本当に財団を解体し、全てのグループ企業を売り払ってしまった。
といっても経営者が財団でなくなっただけで、特に大きく変わった訳ではなかったらしい。
債権整理後に余ったお金もだいぶあったようだが、
兄はその中の一部を兄弟達に平等に振り分けた後、本当に全額寄付してしまった。


「たくさん金があってもえぇことないわ」
兄はうんざりとしたようにそう言っていた。それ以上のことは分からない。
聞いても教えてくれなかったし、自称秘書の山口君も笑うだけで教えてくれなかった。
今では俺は普通の会社員だし、兄は孤児院をのんびり経営していて、あの時の鋭さは見る影もない。


何がどうなってこうなってしまったのか。
あっという間過ぎていまいちよく分からないかったが、これはこれで良かったんだと思う。
流石に父親はショック過ぎて寝込んでしまったようだが、そんなことは俺達にはどうでもいいことだった。
血は繋がっていても、家族の愛情なんてなかったんだから。


母親はこの展開が面白かったらしく、多少のお金ももらえたこともあって、満足したらしい。
俺は今、完全に自由の身だ。
披露会の時に気付いた、本当に欲しかったものは手に入らなかったが、
それでも兄の傍にいられる今の立場が手に入ったのだから、それはそれで満足せざるをえないだろう。


俺の空白の数年の内に山口君が手に入れていたあの立場は、今の俺が手に入れられるものではないだろう。
けれど俺が兄と関わったあの時間は山口君には手に入らないものだから、イーブンだ。


俺は兄が大っ嫌いだった。何故なら対等な関係にはなれなかったから。

そして多分誰よりも兄の事が好きだった。何故なら対等に扱ってくれたから。

それは、今でも変わらない。







-------------------------
呟きで書いていて、あまりに長くなり、投稿するのがめんどくさくなったのでこの形でUP。
元々こっちにも上げる予定だったから別に構わなかったんですが(笑)
何がきっかけで書き始めたか、はっきりとは覚えてないんですが、多分スピッツの「つぐみ」だと思います。
愛してる、それだけじゃ足りないけど〜という歌詞のある、思いっきり恋愛の歌(多分)なんですが、
私の中ではホムクルのテーマソングになってる気がします(笑)
隠しきれないトゲトゲでお互いに傷つけて そんな毎日も、なぜだろう、ふり返ればいとおしくて
の部分が私の中のホムクル像にヒットし過ぎました。
もちろん、「愛してる」の部分は、「家族として愛してる」に読み替えてます(笑)


2011/10/11





close