call my name
ソファの上で小さい子どもがぬいぐるみで一人遊びしている。
自分で座れるようになったばかりのその子の様子を、坂本は書類の整理をしながら、時々眺めていた。
「あー、うー」
ぬいぐるみの手を握って、ぶんぶん振りながら、何かを話しかけている。
小さい子どもはこんなもんなのか。
どう接していいのか分からずに持て余していた坂本としては、准一が一人遊びできるようになったのは嬉しいことだ。
今まではできなかった准一の観察をしながら、坂本は頬を緩ませる。
その時、准一が不意に坂本の方に視線を向けた。
2人の視線が合う。
坂本が何となく視線を逸らせずにいると、准一が口を開けた。
「あーう。あ、ま、まー、く」
准一が坂本に向かって必死に声を出している。
坂本は首を傾げて、椅子から立ち上がった。
「准一?どした?」
そう言いながらソファに近寄り、視線を合わせるためにしゃがみこんで、准一の肩に手を置く。
すると准一が坂本の顔にその小さい手を伸ばして、頬に触って、言った。
「まーくん」
瞬間、坂本は固まった。
「・・・・・・・・・・・・え?」
「まーうん、まーくん?」
「・・・・お、俺?」
「うー!」
坂本がポカンとした顔で自分を指差すと、准一は嬉しそうに笑いながら、坂本の頬をぺちぺち叩く。
「・・・・・・・・・・・っ!」
瞬間、坂本は准一を抱きしめて、立ち上がった。
「おっ前・・・・・・・・・・可愛い・・・・・・・・・・・!!」
ぎゅうと准一を抱きしめてから、その頭をわしゃわしゃかき混ぜる。
准一がケタケタと楽しそうに笑う姿を見て、坂本も幸せそうに笑った。
「・・・・・・・准すご・・・・・・・・・・・・」
「・・・俺坂本君のあんな笑顔初めて見たよ・・・・」
扉の隙間からこっそり覗いていた井ノ原と三宅は、呆然として呟いた。
坂本さんに父親意識が芽生えた瞬間。
ちっちゃい子って動きが可愛いよね。
2007/03/18
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