教育方針についての考察
「まーくん!」
「・・・・・おう」
書類を前にうっつらうっつらしていた坂本は、呼ばれた声にハッとして顔を上げた。
「お。准、おかえり」
「ただいま!」
背伸びして机を覗き込む小さな顔に微笑みかけると、嬉しそうな笑顔が咲いた。
今日は、お互いに泊まり合いをして仲良くなった堂本2人組(が世話する子ども3人)のところに遊びに行っていたのだ。
「楽しかった?」
椅子から立ち上がり、両腕を上げて抱っこをせがんだ准一を抱き上げる。
嬉しそうに准一は頷くと、何をして遊んだのかを楽しそうに話し始めた。
話している内に段々と興奮してきた准一は、お互いのセリフだけを言い連ねるようになってくる。
それを意味が解らないと思いながらも、坂本はふんふんと相槌を打ち続けた。
「でな、あしたはよこちょとやすとたっちょんがうちくるの!」
「おぉ、そうかそうか・・・・・・・・・・って明日来んのか!?」
「おん!うちであそぶん!」
げっと思ったものの、キラキラと目を輝かせて期待に満ちた笑顔で頷かれてしまってはダメとは言えなかった。
「・・・・・そうか・・・・・。なら明日のおやつを今から作っとくか」
「まーくんおかしつくるの!?」
「おう。せっかくお客さん来るんだしな。何がいい?」
「えー?」
何がいいかと訊かれ、うんうん唸りながら悩む准一を坂本はソファに降ろす。
そしてその横に腰かけた。
「えーっと、えーっと・・・・・」
(・・・・・・・・・・俺って甘やかし過ぎかな・・・・・)
腕を組んで考え続けている准一の頭をじっと見ながらそんなことを考えた。
(堂本兄弟は結構ビシバシやってるみたいだしなぁ、光一が)
(あのチビ3人組も挨拶だけはキチッとできるんだよな)
(うちもできるっちゃできるけど、何かのんびりしてるし)
(もう少し厳し・・・・・)
「しゅくりーむたべたい!」
准一の言葉が坂本の考えを遮った。
「ぅお?・・・・・シュークリーム?」
「うん!」
(まためんどくせーものを・・・・・)
そう思いながら、よっこらせと立ち上がった。
「はいはい。シュークリームだな」
「やったぁ!!」
嬉しそうにソファから飛び降りて、台所に向かう坂本の後ろをトテトテとついていく。
それを横目でちらり見ながら、坂本はため息をついた。
「ま、いっか」
「何だかんだいって坂本君が一番甘いよね」
「親バカなんじゃない?」
長年の部下達は、上司の苦悩をそう評していた。
2008/12/25
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