元ネタは洋画の『28日後』です。
ウィルスパニックを描いた映画です。
ここで出てくるウィルスは、血を通して僅か数十秒であらゆる動物に感染し、
感染した動物は怒りの衝動を抑えられなくなるというものです。
感染した人間(動物)の血液(というか体液)に触ると、問答無用で感染して、
破壊衝動(ここでは殺人衝動)を抑えられなくなり、身体が完全に死ぬまで襲ってきます。
それだけわかれば話はわかるかと・・・・・・・・・・・。
ではスクロ−ルどうぞ。
どんよりとした空の下。
人気のない街中に、いくつもの死体が横たわる。
獣のようなものに喰いちぎられたような痕を残すものもあれば、銃痕によって体中に風穴を空けて息絶えているものもある。
その中で、目を見開き、獣のように歯を剥き出しにして、体中の穴という穴から血を垂れ流しながら、さまよう人間だった者共。
地獄絵図そのものを体現している街の中で、一羽のカラスがその屍肉を啄む。
ふと何かに反応して、それは飛び去った。
28 Days Later
何気なく彼は空を見上げた。
彼らの行く末を示すかのように、晴れ間を見せない曇天だけが視界に広がる。
そこに一羽の鳥が横切った。
瞬間、左目に何かが落ちる。
「?」
左目の視界が薄っすらと赤くなる。
彼は目を擦って一瞬動きを止め、湧き上がってくる衝動に叫んだ。
「太一ぃ!!俺を撃てぇ!!」
少し離れた所にいた太一は、撃てという言葉に、とっさにライフルを構えた。
その先にいたのは彼。
「・・・・・・・・・・・・・・・・山口君・・・・・・・・・・・・・・・?」
彼は低く唸りを上げ、自らの肩を抱き、何かを抑え込むような行動をしていた。
太一はその動きに見覚えがあった。
次の瞬間、彼は充血で真っ赤にした目で太一を見、雄叫びを上げて太一に向かって走り出した。
感染者だ
太一は判っていた。
彼は何らかの原因であのウィルスに感染した。
もう助からない。
殺すしか手はない、と。
けれど、引き金を引くことも逃げることもできなかった。
「何してんねん!!はよ撃てや!!」
その声と同時に軽快な音。
たらららら、とマシンガンが火を噴いて、彼は全身に風穴を空けてもんどり打ちながら倒れる。
それでも起きあがろうとする彼だったものに、城島は容赦なく鉛玉を打ち込んだ。
マシンガンの弾が尽きた頃、それは動かなくなった。
それはもう見る影もない。元は人間だった肉の塊に変わり果てて。
「・・・・・・・・・・・・リーダー・・・・・・・・・・・」
「言うたやろ・・・・・・・・・・・感染したら10秒でもうあかんねん。身内だろうが何だろうが撃ち殺せ、て・・・・・・・」
肩で息をしながら、横に立つ城島は無表情で言った。
太一は声もなく俯いた。
「行くで」
城島は、その死体を弔うことなく、そのまま打ち捨てたまま、そこから離れた。
太一は、ついさっきまで笑っていたそれに泣きそうな視線を向けて、逸らす。
そして城島の後を追って車に走った。
「兄ぃは?」
車に残っていた松岡が訊いた。
「死んだ」
城島が、それに短く答えた。
太一の横に座っていた長瀬と、松岡の目が見開かれて、言葉もなく2人は俯いた。
無表情でエンジンをかける城島の手が微かに震えていたのを太一は見た。
車は静かに走り出す。
幾羽ものカラスが、そこに残った屍を啄ばんでいた。
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いろいろと切羽詰って、心が荒んだ結果のようです。
以前姉が見ていたのをたまたま見たのがこのシーンだったんですが、
元ネタでは生き残った女の子のお父さんでした。
メチャメチャ怖くて、いいお父さんだったから悲しくて、印象に残ってます。
『28日後』怖いけど、エンディングは知らないです。
見たのはここだけなので・・・・・・・・。
2006/07/26