『自分の目で見て、色々体験してこいよ』
そんなことを言われて来てはみたものの、理解できないことが多すぎて困る。
一番不可解なのは、何であんなに急か急かしているのか、ということだ。
焦ったって何かなるわけでもなし、世界はなるようにしかならないわけで。
短い一生の中でもがいたって何ら変わりはないだろうに。
あぁ、ほら。
今だってまさにそうじゃないかと、そう思うわけです。
L i f e i s...
「キャプテン!キャプテーン!!早く早く!!電車来ちゃうよ!!」
10メートル程先、明るい茶髪が声を上げている。
急かすようなその声に、彼は青年の向こうにある時計塔を見た。
電車の時間まであと1分。この位置からホームまでは最低3分はかかる。
「どうせ間に合わねーよ」
「早く帰って来いって言われてたでしょー!!」
「っていうかこの電車に乗ったって、次に来る準急に次の駅で乗り換えじゃん」
「そうだけど、1本早く乗ったら、早く着きそうな気がしない?」
「それは相葉ちゃんだけでしょ」
ようやく追いつくと、電車を諦めた青年は、えー、と頬を膨らませた。
「着く時間は変わらないよ」
「もー。キャプテンって妙に達観してるよねー。もっと冒険しようよ!」
「相葉ちゃんが急か急かしすぎなんだよ」
そう言っている間に件の電車はやって来て、ゆっくりと発車していく。
「あ〜あ、行っちゃった」
相葉が残念そうに小さく呟いた。
改札に続く階段を登りながら、2人はのんびり会話を続けた。
次の電車は4分後にやってくる予定だ。
「キャプテンがのんびりすぎなんだよ。俺とそんなに歳変わらないのにー」
電車が行ってしまってすぐのホームにはほとんど人気が無い。
急ぐ人は2本前の急行に乗ってしまうし、そうでなくても先に出て行った普通に乗ってしまっている。
文句を言う相葉に、彼は内心、本当は結構違うんだよなぁ、と思った。
「今しか遊べないんだから、もっと時間を節約していろんなことしようよ」
そう呟いた相葉の横顔をちらり見る。
いつも楽しそうな彼が少し真面目な顔をしていて、怒らせたかな、とふと思った。
何で怒るんだろうか。理解できなくて、そのまま視線を外す。
ちょうど、電車の到着を告げる放送がかかった。
「あ、電車来たよ、キャプテン」
嬉しそうにそう笑って、相葉は彼を見た。
耳慣れない金属音が響いて、赤い車両がやってくる。
ぷしゅー、と、少し疲れたような音を立てて扉が開いた。
「・・・・・・・・・・わかんねぇなぁ」
「なんだって?」
電車が動き出すとともに呟かれた言葉は、ガタンという音に消されて、相葉の耳には届かなかった。
* * * *
「それは智君が正しいよ」
彼の斜め前に座るピアスをした青年がそう笑った。
「えー。翔ちゃんまでそんなこと言うのー?」
「翔ちゃんまで、じゃなくて、アンタがおかしいんですよ、相葉さん」
「まー。気持ちは解らんでもねーけど、キャプテンが正しいっしょ」
頬を膨らませる相葉に、同じテーブルに着いていた青年2人がさらに言葉を続けた。
「ヒデー」
「まぁ間に合ったんだからいいじゃないですか、それは」
「そりゃそうだけど」
少し納得いかない様子で相葉はご飯をかきこむ。
「でも智君が何か悟ってる感じなのは確かだよね」
その様子を笑いながらも、櫻井はそう切り出した。
「翔君、それ洒落?面白くないですよ」
「洒落じゃねーよ!」
ニヤリ笑う二宮に、櫻井が噛み付くように反論する。
「それは置いといて、翔君には賛成ー。キャプテン、ホントアンタ幾つ?」
ケラケラ笑ながら、松本がその彫りの深い顔を柔らかく歪める。
「22だよ」
本当は1022歳だけど。
内心そんなことを思いながら、心外だ、という態度を取った。
彼は、実のところ人間ではなかった。
今では数少なくなった聖地と呼ばれるような森の、齢千年を越える杉の木の精霊が本当の姿だ。
彼が根付く前から生きている森の主に言われて、現在、人間の中で大学生として暮らしている。
精霊だから、外見とその生きてきた年数が一致することはないのだけれど、
現在ルームシェアをしている同居人4人はそのことを知らない。
時折こうやって価値観の違いがネタにされてしまっていた。
「怒らないでよ。解ってるよ、ちゃんと」
不貞腐れた彼の様子に、松本は慌てて取り繕う。
「怒ってねぇよ」
その態度に彼は、相変わらずだなぁ、と苦笑を浮かべた。
「それにしても、やっと終わったねー前期」
「長かったー」
「でもまだレポートがいくつか残ってるんでしょ、潤君」
「あー、そうだったー」
「ま、しばらくは課題漬けだけど、終わったら5人でどっか行こうぜ」
課題という言葉に松本と相葉がぐったりするが、櫻井がそれを慰めるようにそう提案した。
「いいね!夏休み明けたら実習だもんね〜」
「あ、あと、花火大会とかあるでしょ、この辺でも」
「それも行こうよ。先輩とかに聞いてさ、ベストスポット探しとくよ」
「男5人で花火大会って、ムサくるしいし!!」
「いいだろ!どうせみんな独り身なんだし」
ゲラゲラ笑い合う4人の雰囲気が楽しくて、彼も笑った。
* * * *
ルームシェアを始めて2回目の夏が来た。
約一年一緒に暮らし、同居人の性格を大方把握できてきたと彼は思っている。
一番年下の、体育科の松本、音楽科の二宮、二人より一つ年上の理科の相葉に、
他大学に行っていたのに辞めて再入学した社会科の櫻井。そして美術科の自分。
学年は同じでも年齢も専攻もバラバラの5人が、よくこんな風に仲良くなれたものだと、
四人の人となりが判ってきてからは、彼は常に思っていた。
どういった手段を用いたのか知らないが、自分が人間の大学に入れるとは思わなかったし、
人間との生活に馴染めるとも思わなかった。まさか友人ができるなんてことも。
それもこれも、恐らくは同居人達のお陰だろう。
「・・・・そこはツイてたなぁ」
「何が?」
無意識に考えが口に出ていたらしく、隣に座っていた二宮がゲームから顔を上げて彼を見ていた。
「ん?」
「何がツイてたの?」
「や、こないだアイス喰ったらもう1本当たったの」
「へ〜。じゃあ俺にアイス奢ってくださいよ」
「何でだよ」
「1本得したんでしょ?それを俺に還元していただいてぇ、」
「なんでニノに還元しなきゃなんねぇの」
さも当然の如く言った二宮に、彼は苦笑を浮かべる。
「ワタクシと大野さんの仲じゃないですか〜」
二宮も言いながら破顔した。
「ふふ。なら今から食べに行く?」
「え?マジですか?」
「しゃーないからご馳走してあげる」
彼はそう言って、鉛筆を走らせていたスケッチブックを閉じる。
「やったね。ゴチになりま〜す」
嬉しそうに、二宮はゲームの電源を落とした。
そして勢いよく立ち上がる。
「コンビニアイス?」
「嫌?」
「俺ハーゲンダッツが良いな」
「たけぇじゃん」
「奢ってもらえるなら高いの食べなきゃもったいないじゃないですか」
「もー、しゃーねぇなぁ」
小さく息をつきながら、彼も立ち上がる。
「早く行こ、キャプテン」
彼が立ち上がったのを確認して、二宮が手を出した。
「急がなくてもアイスはなくなんねぇだろ」
「でも早く味わいたいじゃないですか」
「判った判った」
普段はクールな態度しかとらないのに、自分の前では何故か今みたいな子供っぽいことをする。
それに気付いたのは最近のことではあるけれど、彼はそれを嬉しく思っていた。
伸ばされた手を掴むと、僅かに握り返される。
そうやって手を繋いだまま玄関に向かい、どちらともなく手を離して、靴を履いて外に出た。
「まぶしー!」
「入道雲すげぇなぁ」
夏特有の、突き刺すような日差しに、2人とも同時に目を細める。
「チャリンコ2ケツしよう」
「えー?もちろんキャプテンが漕いでくれるんでしょうね?」
「行きは漕いだげる。帰りはニノが漕いでよ」
「歩くよりは楽かな。しょうがない、漕いであげましょう」
その返事を聞いて、彼はポケットから自転車の鍵を取り出し開錠した。
「乗って」
「お願いしまーす」
二宮が荷台にちゃんと落ち着いたのを確認して、彼はペダルを踏み込んだ。
ギシギシと、使い始めて3年目の自転車がヒト2人分の重さに悲鳴を上げる。
肩を掴む手に力が入るのが分かった。
漕ぎ始めはバランスを取るのが難しい。それを感じ取って無意識に力が入っているんだろう。
アパートの周りの木陰を抜けるとすぐに、近くを通る大きな道路に出た。
「おーのくーん!スピードアーップ!!」
「おっ前、俺ばっかりしんどいじゃねーか!!」
「帰りは漕いであげますって!!風を感じたいの!!」
「もー!!」
文句を言いながら、彼はペダルに力を込めた。
「速い速い!さっすが大野さん!!」
「こんなんで褒められても嬉かねーよ!」
後ろで立っているのだろう。頭の上から降ってくる二宮の声に文句を言いながら、彼は笑う。
「あとちょっと!がんばって!」
「ぬおおお!」
二宮の声掛けにノってやりながら、彼は頂上まで漕ぎきって、ペダルから足を離した。
自転車は勢いでそのまま走り続け、下り坂に差し掛かってスピードを速めだす。
バランスを失って倒れてしまわないように、彼はハンドルを握り締めた。
「風が気持ちー!!」
「でも生温〜い!」
2人でゲラゲラ笑いながら坂道を下っていく。
坂道を下りきってすぐの交差点の向こう、コンビニの看板が見えた。
結局二人でソフトクリームを食べ、花火を買って家に帰った。
* * * *
「いーなー!俺もソフトクリーム食べたい!」
ジュウジュウと良い音を立てるホットプレートの上には、肉やら野菜やらが所狭しと敷き詰められている。
「明日行ってこれば良いじゃないですか」
「えー!一人で行っても楽しくないじゃん」
二宮が、ピーマンをひっくり返しながら相葉に言った。その言葉に相葉は不満そうに声を上げる。
「しょーちゃん、松潤、明日行こうよ!」
「ごめん、俺明日バイトだわ」
「えー!?」
「残念ながら俺もバイトです」
松本に断られ、すがるように櫻井に視線を送るも、頼みの綱もあっさりと切れてしまった。
「じゃあ一緒に行く?」
大野がそう声をかけると、しょんぼりしていた表情が、打って変わってパッと輝く。
「やったね!ありがとうリーダー!」
「わ!ずりぃ!」
相葉を中心にした3人が揉め始めた。
それを苦笑いを浮かべて眺めながら、櫻井は大野の皿に焼けた肉や野菜を放り込んでいく。
「食べてる?智君」
「ありがと。食べてるよ」
そう笑って彼は肉を口に運んだ。
「今日豪華」
「あっついからさー。精が出るもの食べたいって言ったら、じゃあ焼肉ってなってさ」
「相葉ちゃん?」
「正解」
金無いから豚だけど、苦笑しながら櫻井は鉄板に新たに野菜や肉を追加した。
「智君、課題は終わったの?」
「いんや。まだレポートが2つほど溜まってる」
しかめっ面で彼が答えると、櫻井は苦笑を浮かべて、俺は4つあると呟いた。
「さすが社会科。文系は違うね」
「いやいや、芸術系のアナタも十分すごいですよ」
カチャカチャと皿同士がぶつかって音を立てる。
洗いあがった皿を拭きながら、彼は濯ぎをする櫻井を見た。
「何で翔ちゃんは、一回大学辞めてこっちに再入学したの?」
「えー?」
普段から不思議に思っていたことを質問すると、櫻井は困ったように苦笑した。
「経済学部だったんでしょ?」
「そうですよ」
「何で教育学部?今の専攻、社会なんだから、そのまま続ければよかったと思うんだけど」
「うーん」
考えるように櫻井が真面目な表情を浮かべた。
彼は黙って櫻井の答えを待つ。少しして、言葉を選ぶように、慎重に話し始めた。
「ポスターセッションっていうプレゼン手法知ってる?」
「いんや」
「体育館みたいな広いところでさ、何とか転みたいにそれぞれスペースをもらって、そこで発表するの。
自分のテーマに興味を持ってくれた人に個別で説明する、みたいな感じ」
「うん」
「前の学校でそれやってさ。経済に関してのことだったんだけど。
それがすごくやりがいがあって面白かったんだよね。人によって言い方とかも変えないと伝わらないし。
何回かやってるうちに、こういうことがしたいって思ってね。これは教師しかないだろうと」
「それで再入学?」
「そう。どうせ免許取るなら小学校から高校までほしくない?」
「そんなもん?」
「まぁ、俺はそう思ったわけですよ。2年間がもったいない気がしたけど、でもちゃんと初めからやりたくって」
時間は充分あるし、と、満足そうな、期待に満ちた表情で櫻井は言う。それを彼は少しだけ疑問に思った。
そう言う割には、4年間で取れば良い単位を、毎日授業でいっぱいにして取れるだけ取ろうとしている姿をよく見る。
焦っているのか焦っていないのか、彼には良く分からなくなった。
「・・・・・・・・・・・何で今取れるだけ単位取ってんの?来年も再来年もあるじゃん」
「3年は3年で、4年は4年でやりたいことがあるからね。今の内にやれることはやっとかないと」
今日やれることは今日やろう、という主義なんだろうか。
1年次も現在も、必要最低限の単位だけを取っている彼には、やはりよく分からなかった。
* * * *
潮風に乗って火薬の臭いが鼻に届いた。
波の音とともに花火の小さな燃焼音が聞こえて、彼は振り返る。
「疲れた?」
火のついた花火を手に松本が立っていた。
夕食終わり、花火を買ってきたと話題に上げると、今日やろうという話になり、家の近くの砂浜にやってきたのだった。
「いんや。疲れてはないよ」
「何見てたの?」
「風の音聞いてた」
シューシューという音が次第にフェードアウトしていく。
手の花火が静かになると、松本は彼と同じように海に背を向けて、彼の視線の先を追う。
サワサワと、木々が風に揺れる音が耳に届いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あのさ」
「んー?」
少し離れたところから三人の騒ぐ声が聞こえる。
「変なこと訊いていい?」
そう訊いた松本の方を向いた彼は、けれど横顔しか見ることは出来なかった。松本は視線を真正面に向けたまま。
「なに?」
「・・・・・・・・・・率直に聞くよ?」
「うん」
「大野君って人間?」
「ううん」
彼は即座に否定した。その返答に、訊いた本人である松本が驚きに目を見開いて彼の方を見る。
「うそ」
「訊いといて答えたら嘘って、そりゃねぇよ」
「いや・・・・・・・・・こんなドンピシャな返事が戻ってくるとは思わなくってさ・・・・・」
動揺をはっきりと表情に出しながら、松本はその場をウロウロする。
苦笑を浮かべてそれを見る彼の視線に気付いて、恥ずかしそうにその場に腰を降ろした。
「驚いた?」
「そりゃ驚くよ」
噛み付くような松本の反応に、彼は笑いながら横に腰を降ろす。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱりそうだったかぁ」
「分かってた?」
「いや、でも何か違うなぁとは思ってた。今訊いたのは何となく。冗談で終わればいいなぁって」
「スマン」
「何で謝るんだよ。違うだろ。それより、人間じゃなかったら何なの?」
その問いかけを聞いて、今度は彼が目を見開く。
「・・・・・・・・・・なに?」
「いやー。人間じゃなかったら嫌われるかなーと思ってたんだけどさ、実は」
「何で?」
「・・・・・・何でって・・・・・・・」
「人間だろうとそうじゃなかろうと、大野君は大野君じゃん。それじゃダメ?」
松本が真摯な目で彼を見た。驚きのあまり言葉が出ず、彼はその目を見つめ返す。
正体がバレたらこの生活は終わるのだろうと思っていた彼には、松本の考え方の意味が解らなかった。
「・・・・・・・・・・普通ってさ、気持ち悪い、とか、化物、とかって、言わない?」
「うーん。・・・・・・・知らない人がそうだったらそう思うのかもしれないけど、大野君だからなぁ。
何か、実は人間じゃありませんでしたって言われても、そうなんだ、って思っちゃった・・・・ンだけど」
「・・・・・・・・・・・・そんなもん?」
眉間にシワを寄せて首を傾げる彼に、松本が苦笑を浮かべてそれを指差した。
「眉間にシワ寄ってるよ」
「・・・・・・・やっぱり人間ってわかんねぇなぁ。排他的な割には、よく解らないところで寛大で大胆だし・・・・・・・。
そもそも何でそんなに急か急かするんだ?急いだって変わらないじゃん」
理解できなすぎて少しだけイライラして、彼は今まで疑問に思っていたことを口にした。
「たかだか100年なんだから焦っても焦らなくても変わらないだろ」
「う〜ん・・・・・・大野君が何年生きてるのかは知らないけどさ、たかだか100年しか生きられないから焦るんだよ」
そこまで言って松本は立ち上がる。そして彼を置いて3人の元に走っていった。
しかしすぐに戻ってくる。疑問符を頭の上に浮かべていた彼の横に、花火を持ってもう一度腰を降ろした。
「急いで、焦って、それでも10分とか、ほんの少しでも時間ができたらね、ほら」
松本は持っていた花火を一本彼に渡し、自分の分と彼の分に火をつけた。
じりじりと紙の漕げる音がして、パチパチ、小さく火花が上がる。どうやら線香花火のようだった。
「こうやって余分に花火を楽しめるじゃん」
「・・・・・・・・・・・・・」
「ただそれだけのことだよ」
松本はそう言って笑った。
彼はその笑顔を見て、そして花火に視線を移した。
先端の黄色い光が、小さくなったり大きくなったり、球形は維持しながらパチパチと僅かに姿を変える。
「・・・・・・・・・・なるほど」
ポツリと呟かれた言葉は、花火の残りを持ってやってくる3人の喧騒に掻き消された。
ワイワイと始まる大騒ぎを聞きながら、大きくなりすぎて落ちて消えていく花火の顛末を眺める。
そして、4人の顔を順番に見ていく。どの顔も幸せそうな楽しそうな笑顔が浮かんでいた。
「なるほどな」
彼はもう一度そう呟くと、地面に放り出された花火の束から2本ほど取り上げて火をつけた。
* * * *
数回の呼び出し音の後、プツリと通話が繋がった。
『おう、どうした大野』
相手の気遣うような口調に、彼は、相変わらずと苦笑を浮かべる。
「んー。たまには報告をしようと思って」
『そうかそうか。どうだ?そっちの生活は』
大したことはないのだけどと断りを入れてそう告げると、相手の声音が明るくなった。
「楽しいよ」
『良かったじゃねーか』
「うん」
ふと頭を上げる。
視線の先、隣の棟の出入口から待ち人の姿が出てくるのが見えて、彼は凭れていた壁から身体を離した。
「もうちょっと一緒に焦ってみることにする」
『は?・・・・・・・・よく分かんねーけど、好きなように楽しんでこいよ』
「ありがとう、松兄ぃ。じゃあ行かなきゃいけないから切るね」
『おう。まぁ、がんばれ。また報告してくれよ』
「うん」
手を振って近付いてくる2人に手を振り返しながら、彼は通話を切り、鞄に携帯を突っ込む。
そしてそちらに向かって歩き出した。
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久しぶりの更新で、人外キャプテンのお話でした!
久しぶりの更新が気象さんたち、というのが東京サイトとして失格のように思えるのですが、
書きかけ放置群の中ですぐに書き上げられそうなのがこの話でした。
いただいたリクエストは、
「長く生きすぎてやや達観しているキャプを囲んだ5人。キャプ以外は人間」
というものでしたので、長生き = 木 → 木の精霊、ということでこの設定になりました。
一応、キャプが22(1022)、櫻井さんが21、相葉さんが20、ニノ・松潤が19のつもりです。
キャプについては特定はしてませんが、ゲストのあの人は松の木の精霊です(笑)
ちょっと今までの話とは違う構成を目指してみたので、ぎこちない文章かもしれません(汗)
久しぶりすぎて、東京よりも口調が分からなくて困りました・・・・・・精進します!
お待たせしました!!
いかがでしょうか、むいさま。
お気に召さなかったら書き直しますので、遠慮なくおっしゃってくださいね。
改めて、リクエストありがとうございました!!
2009/09/27
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